R&Bを聴いていると、同じメロディーでも歌い手によってまったく違う表情に聞こえることがあります。その差を生んでいるのが、ファルセットやフェイク、メリスマといったボーカルテクニックです。言葉だけ聞くと難しそうですが、仕組みを知っておくと、いつもの曲がぐっと立体的に聞こえてきます。この記事では、R&Bでよく使われる代表的なテクニックを、聴く側の目線でわかりやすく紹介します。
ファルセット:繊細さと切なさを生む裏声
ファルセットは、いわゆる裏声のことです。地声よりも息の成分が多く、柔らかく透き通った響きになるのが特徴です。R&Bでは、サビの最後や感情が高まる場面で地声からファルセットへすっと切り替えることで、切なさや優しさを表現します。
聴くときは、どの言葉でファルセットに切り替わっているかに注目してみてください。多くの場合、歌詞の中でいちばん伝えたい言葉や、余韻を残したい部分に使われています。男性シンガーが高音を裏声で軽やかに歌うスタイルは、日本のR&Bでもおなじみの魅力のひとつです。
フェイクとアドリブ:メロディーを自由に崩す技
フェイクとは、元のメロディーをあえて崩したり、装飾を加えたりして歌うことです。ライブで同じ曲を聴いても、音源とは少し違う節回しで歌われることがありますが、それがまさにフェイクです。
曲の後半やアウトロで、メインのメロディーの後ろから自由に歌声が重なってくる部分もアドリブの見せ場です。決まった譜面がないぶん、シンガーの個性やその日の気分がいちばん表れるところでもあります。録音された作品では、何度も重ねたコーラスとアドリブが組み合わさり、曲に厚みを加えています。
メリスマとラン:一音に多くの音を乗せる
メリスマは、ひとつの音節に複数の音程を連ねて歌う技法です。たとえば「愛」の「あ」の一音の中で、音程を上下に細かく動かしながら歌うイメージです。素早く音階を駆け上がったり駆け下りたりするものは、ランと呼ばれることもあります。
ゴスペルにルーツを持つ技法で、ソウルやR&Bの歴史の中で大きく発展してきました。うまく使うと歌に華やかさと熱量が生まれますが、多すぎると歌詞が聞き取りにくくなります。上手なシンガーほど、使う場所を絞って効果的に聞かせていることに気づくはずです。
ブレスと語尾の処理:細部に宿る表現力
派手なテクニックだけでなく、息づかいや語尾の扱いもR&Bらしさを決める大切な要素です。フレーズの頭にわずかに息を混ぜたり、語尾を少しだけしゃくり上げたり、逆にすっと抜いたりすることで、同じ歌詞でも聞こえ方が大きく変わります。
ヘッドホンで聴くと、こうした細かな表現がよくわかります。シンガーが言葉をどう置いているかに耳を澄ませると、歌詞の感情がより近くに感じられるでしょう。
テクニックを意識して聴いてみよう
お気に入りの曲を一曲選んで、「ファルセットはどこか」「フェイクはどこか」と探しながら聴いてみるのがおすすめです。Jay’edの楽曲のように、なめらかな歌声と繊細な表現が魅力のR&Bは、こうした聴き方にぴったりです。R&Bというジャンルそのものについて知りたい方は、r & b とは?人気の音楽ジャンルをチェックしようもあわせて読んでみてください。
テクニックはあくまで感情を届けるための手段です。仕組みを知ったうえで改めて聴くと、シンガーが一つひとつの言葉に込めた思いが、今まで以上に伝わってくるはずです。